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量(Vo2maX)は確固とした基盤を築いており、performance related physical fitnessとしてもhealth related physical fitnessとしても最適の指標4)と考えられているが、有酸素性エネルギー供給系のもう1つの代表的指標と考えられる無酸素性作業閾値(AT)に関しては、定義や評価が定まってはいない12)。

 

前報16)では、AT関連指標として、性・年齢別の換気閾値(VT)の標準値を自転車エルゴメーターでの発揮パワーで提示し、簡便に有酸素性作業能力を評価する指標であるPWC75%HRmaxとVTとの相関関係を検討した。本研究の主たる目的は、運動負荷法として自転車エルゴメーターを用いた場合の、一般健常成人を対象としたVTにおける酸素摂取量(Vo2@VT)と最大負荷時(Wmax)の酸素摂取量(Vo2@Wmax)の性・年齢別の標準値を提示することである。さらに、日常の運動実施状況における差がVT,Wmaxでのパワーおよび酸素摂取量、体脂肪率、脚伸展パワー等の体力指標にどのような影響を及ぼすかを検討することとした。

 

研究方法

1. 対象者

本研究の対象者は、大都市に在住し、ある公的施設にて自らの意志で健康度測定17)を受けた一般成人(男性510名、女性924名)である。対象者にはアンケートで日常の運動実施状況を質問し、週に1回以上の運動習慣がある群(Ex群)とない群(Cont群)とに分類した。さらに男女それぞれ10歳刻みの年齢階級でグループ分けし、各群の平均値、標準偏差を算出した。

2. 形態測定

身長、体重、皮下脂肪厚(上腕背部、肩甲骨下部)を測定した。体脂肪率は皮下脂肪厚の和から推定した11)。

3. 自転車エルゴメーターによる最大負荷試験

自転車エルゴメーターによる漸増負荷試験(男性20W/分、女性15W/分のramp負荷)を行い、運動中の肺胞換気動態を測定してVTを判定した。測定に用いたシステムは、呼気ガス分析装置 がヴァイズメディカル杜製METS.900、自転車エルゴメーターがコンビ株式会社製Ergometer232Cであり、自転車エルゴメーターはMETS.900にて外部制御した。ペダリング速度は50〜60rpmを維持させるようにした。VTは前報16)と同様に以下の基準で判定した。
1)Vo2に対するVEの非直線的な上昇
2)Vo2に対するVco2、の非直線的な上昇
3)PETCO2の低下を伴わないPETO2の上昇
4)VE/Vco2の上昇を伴わないVE/V02の上昇
運動負荷の終点(Wmax)は、被検者任意の判断による運動継続が不可能になる時点、他覚的には収縮期血圧250mmHg以上、異常な心電図所見の発現とした8)。VTおよびWmaxでの酸素摂取量は、5〜15呼吸の連続したbreath−by−breathデータの移動平均値を採用した。

4. 脚伸展パワーの測定下

肢筋群の筋力の指標として、竹井機器工業株式会社製LEGPOWERを用いて、座位姿勢における下肢伸展動作の発揮パワーを測定した。フットペダルの移動速度は0.8m/秒に設定し、最低4試行の測定を行い、各試行において発揮された平均パワーの最大値を採用した10)

5. 統計処理

男女各年齢階級におけるEx群、Cont群間、男女各年齢間の平均値の差の検定は、t−testを用いて行った。P<0.05を有意とした。

 

研究結果

表1,2に、男女各群の身長、体重、体脂肪率、体重あたりの脚伸展パワー、VTおよびWmaxでのパワー、体重あたりの酸素摂取量を示した。Ex群とCont群の形態的比較では、身長について、女性20歳代でEx群が有意に低く、体重について女性60歳代でEx群が有意に少なく、体脂肪率について、男性30および40歳代でEx群が有意に低いという結果であった。体重あたりの脚伸展パワーについては、男性では40,50歳代において、Ex群が有意に高く、女性では60歳代以外のすべての年齢階級でEx群が有意に高いという結

 

 

 

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